コラム
2025.11.12
皮膚科専門医について
今回のコラムでは「皮膚科専門医」についてご紹介します。
当院で診察を行う医師は、院長をはじめ女性の皮膚科専門医が担当しています。
このページをご覧になっている患者さまは、
「そりゃ皮膚科って書いてある病院で診察してるんだから、専門なんでしょうよ!」
と思っていらっしゃる方も多くいるかと思いますが、実はちょっと違います。
病院の「標榜科」とは?
皆さまは病院を探すときに、「内科」、「整形外科」、「皮膚科」、「耳鼻科」など、その病院の看板やホームページに記載している診療科を頼りに病院を探すことが多いと思います。
一般的に「標榜科」と呼んでいますが、標榜するための資格は特段不要で、医師免許さえあれば病院(診療所)を開くことができ、管轄の保健所に届出さえすれば、スキルや経験を問わずどの科でも自由に名乗ることができます。
例えば、医師免許取得後、2年間の初期研修医期間を無事終えた医師は、全くの未経験でスキルがなかったとしても、いきなり病院を開いて「皮膚科の院長先生」を名乗ることが出来てしまいます。

これは極端な例としても、皮膚科というのは、実際に症状が目に見えていることが多いことから、他の科の先生方から「経験はないけど俺でも大体は診れるんじゃない…??」と思われがちな科の1つです。
内科でしっかり研鑽を積んできた一般内科の先生が新しく病院を開院する際に、
「患者さん増えるかもしれないし皮膚科も標榜しておこうかな・・・」
「とりあえずステロイドと抗ヒスタミン剤を処方しておけばいいんでしょ・・・」
といった形で標榜されてしまうこともあります。
患者さまからしたら迷惑な話で、実際にちゃんと皮膚の疾患を診ることができる経験のある医師/病院と、なんちゃってで皮膚科を名乗る病院の区別が付かなくなってしまっています。
皮膚科の疾患の中には、確かにステロイドや抗ヒスタミン剤で改善するものも多くあるのですが、似たような症状の違う病気はたくさんあり、そういった雑な治療によって治療が遅れてしまう、病状が悪化してしまうといった事例が、実際には後を絶ちません。
そういった環境の中で「専門医制度」が生まれ、ちゃんとその診療科の勉強をし、大学病院や総合病院など指導体制が充実している病院で何千・何万もの症例を経験し、変わらず知識をアップデートしていて、その科のことは信頼して任せられる医師であることを担保してくれるのが「専門医」です。
「皮膚科専門医」になるためには?
このような背景の中できた専門医制度ですので、専門医になるため、また、専門医を維持するために高いハードルが用意されています。
診療科ごとに専門医の認定基準は異なっており、日本皮膚科学会/日本専門医機構が認定する皮膚科専門医の場合は、初期研修修了後、最低でも5年間の後期研修を経てようやく皮膚科専門医の受験資格を得ることができます。
皮膚科専門医になるためのステップ
大学医学部の合格/卒業(6年間)
医師国家試験の合格
臨床研修(初期研修、2年間)
医師国家試験に合格、医学部を卒業すると、大学病院での初期研修を2年間行います。
「研修医マッチング制度」と呼ばれる、研修先病院へのいわゆる「就活」のような制度を通して初期研修病院が決まります。
その後、研修先の病院で、内科(6ヶ月)、救急(3ヶ月)、外科、小児科、産婦人科、精神科、地域医療、一般外来を各1ヶ月以上ローテーションで経験します。残りの9ヶ月は選択科目として、院内での調整の元で、別の診療科や、2回目の診療科に回ります。
後期研修(専攻医、5年間)
研修医の後半に、日本専門医機構が行う「シーリング制度」を通して、どの診療科を専門にしていくのか、を選択します。
研修医マッチングと同様、都道府県や診療科によって上限枠が決まっています。
例えば、東京都内や、マイナー科(皮膚科や眼科、耳鼻科など)は人気が高く、選考倍率が高い傾向がある一方、過疎地域や、患者さまの急変などでよりハードな勤務が求められる科は希望者不足になる傾向があります。
この期間の医師を「専攻医」や「後期研修」と呼び、この期間に指導医の下で皮膚科領域での臨床経験を多く積みます。また5年間の臨床経験のみならず、論文の執筆や発表など学術面での知見を蓄積することで、はじめて皮膚科専門医試験の受験資格が得られます。
皮膚科専門医試験
指導医の推薦、論文の執筆や発表など、専攻医期間で十分な経験を積んだのち、年に1回だけ行われる皮膚科専門医試験を受験し、合格すると皮膚科専門医として認められます。
皮膚科専門医を維持するためのステップ
晴れて皮膚科専門医になれたとしても、認定期間の5年間が満了すると失効してしまいます。維持するためには、皮膚科専門医の認定期間中に臨床現場で多数の症例を経験し、知識をアップデートして高い専門性を維持できているかどうか、改めて厳しく審査されます。
診療科によって様々な専門医制度が用意されていますが、各診療科のなかで、皮膚科専門医の更新は比較的厳しめのハードルを課すことによって、皮膚科専門医のクオリティを担保しています。
診療実績
原則として、皮膚科の保険診療に週31時間以上従事していることを求められます。
皮膚科学会単位認定
前回の更新からの臨床治験のアップデートを含め、必要な学会単位を取得している必要があります。
お肌のお悩みは皮膚科専門医に診てもらってください
このように書くと皮膚科専門医になり、また維持するのはとても大変なように感じられると思いますが、一方で大学病院時代から、目の前の診療や論文、試験勉強など様々なタスクをサボらずに一生懸命取り組んでいれば皮膚科専門医は自ずと取得できます。
一方で、皮膚科を標榜しているにもかかわらず皮膚科専門医を持っていない医師は、後期研修課程のどこかで何かしらの原因でドロップアウトしてしまった結果であり、必ずしも十分な臨床知見を備えているとは言えません。昨今では、大学病院での後期研修を一切経ずにいきなり美容の世界に飛び込む「直美」といわれるキャリアパスの医師も多いようです。
しかし、アトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤治療のように、皮膚科専門医でなければそもそも認められない治療もあります。たとえそういった高度な治療でなかったとしても、間違った治療で症状が悪化して取り返しがつかなくなる前に、皮膚科専門医の元で治療を進めることをおすすめします。
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